コーヒーの保存方法はどれが正解なのだ?(1)

コーヒーに関するお客様からの質問でいちばん多いのは「保存をどうすべきか」というもの。

常温がいいのか、冷凍がいいのか、それとも冷蔵か。豆のままと粉にひくのとでは、香りの抜けかたはどれぐらい違うか、等々。

今はネットで何でも調べが付く便利な時代ですが、この問題ではみなさんかなり迷っておられる様子です。

 

理由のひとつに、専門家でも人によって言うことが違うということがあるように思います。ネットで試しに調べてみると、やっぱり皆さん言うことが微妙に違ったりします。

 

当店ではいつも、2週間以内に飲みきってしまうのであれば袋のまま常温で、それ以上は冷凍してください、粉の場合は香りの抜けが早いので、なるべく早く召し上がってくださいとお答えするのですが、ふと、これで十分な答えになっているだろうか、と思ったわけです。

 

いつも言ってるその内容は、むかしよく通った焙煎店で教わったのをそのまま伝えているだけで、自分でちゃんと確かめたわけではありません。長いことやっているので感覚的には間違っていないと思うのですが、裏を返せば感覚でものを言っているわけです。

 

そこで、まず最初にこいつを確かめてみることにしました。実験の方法は次回。

コーヒーの保存方法はどれが正解なのだ?(2)

実験にあたり用意したコーヒー豆は、「ブラジル プレミアム ショコラ」の中深煎りと、「エチオピア イルガチェフェG1 コンガ」の浅煎りの2種類。

これを30gずつ小分けにしてチャック付きスタンド袋に入れ、次のような方法で保存しました。

 

(1)豆のまま常温で保存

(2)粉(中挽き)にして常温で保存

(3)豆のまま冷凍庫で保存

(4)粉に挽いて冷凍庫で保存

(5)粉に挽いて脱酸素材を封入して冷凍庫で保存

 

保存期間は当初1か月のつもりでしたが、1か月では差がつきにくいかもしれないということで2週間延長しました。

脱酸素材入りを試したのは、酸素によるダメージが大きく影響すると、どこかで誰かが書いていたので、このさい一緒に確かめて見ようと思ったのです。

 

じつは実験に入る前のお試しで、冷凍庫に保存してみたのですが、見事に庫内の「臭い」がついて大失敗。コーヒーの袋をそのまま冷凍庫に入れたのが原因でした。

 

“冷蔵庫”の庫内が臭うのは知ってましたけど、冷凍庫も、長時間入れておくと臭い移りするんですね。

凍っているから臭わないようなイメージを持っていましたけど。

 

なので今回は袋をジップロックに入れしっかり密封。

 

実験を行ったのは4月中旬から5月末にかけてでした。

 

 

 

コーヒーの保存方法はどれが正解なのだ?(3)

保存期間は1ヶ月半でした

 

 

さて、気になる結果発表です。

まず、ブラジル プレミアム ショコラの中深煎りから。

 

(1)豆のまま常温で保存→香りは少し抜けるもショコラ特有のビターチョコのような質感を保っておりまあまあ。<評価★★>

 

 コーヒー豆は生鮮食品であり、鮮度が大事だと店頭でもよく申し上げるわけですが、豆によっては必ずしも当てはまらない場合もあります。例えばこのブラジル、ケニア、マンデリンなど、焙煎が中深煎り〜深煎りのものは、1週間〜2週間ほど経ったころがもっとも美味しい飲み頃となる場合があります。今回は1か月半とかなり焙煎から時間が経ったわけですが、実際、まだイケてます。

粉で保存したほうは「蒸らし」でまったく膨らまず

 

(2)粉(中挽き)にして常温で保存→嫌な味はないものの代用コーヒーや穀物コーヒーのよう。<評価NG>

 

 コーヒーの命であるアロマが抜けきってしまいました。“蒸らし”のところではまったく粉が膨らまず、いきなりペソっとへこんでしまい、<写真>そのあとも湯を注ぐときに「シャバシャバ」と湯の表面をたたく音がする感じ。こりゃ、ダメだわ。

 粉に挽いたらやはり常温保存は避けた方がいいですね。

 

 

(3)豆のまま冷凍庫で保存→分かっていたことだけど、用意した5タイプの保存法のなかではいちばん美味しい。<評価★★★★>

                 

焙煎直後より抽出液が濃くなる

 蒸らしで粉がしっかり膨らみ、抽出中は湯が粉全体に染み入っていく感覚が保たれています。今回は保存期間1か月半でしたが、もっと長くても大丈夫そう。

 ちょっと本筋から外れますが、気がついたことをひとつ。焙煎直後よりも、しばらく時間を置いたほうが「濃く抽出される」ようなのです。前から感じていたことではありましたが、今回集中的に抽出してみて、やはり間違いないように思います。なぜそうなるのか、科学的根拠については私にはまったく分かりませんが。

 

(4)粉に挽いて冷凍庫で保存→まろやかなコクがあり、思った以上に良い。香りも(2)豆のまま常温と同程度には保たれている<評価★★>

 

 冷凍する効果がいちばんはっきり現れるのは、粉に挽いたときでした。この実験結果から、今後は「粉に挽いたら“必ず” 冷凍保存してください」とおすすめすることにします。

 

(5)粉に挽いて脱酸素材を封入して冷凍庫で保存→(4)と比較してはっきり良いと言えるほどの差はない。<評価★★>

 

 酸素が影響を与えるということで、脱酸素材を入れてみたわけですが、「差」といえるほどのものは感じられませんでした。

手間を考えれば、少なくとも中深煎りの場合は「脱酸素材ナシ」で問題ないというのが今回の実験での結論です。


 次回はイルガチェフェの浅煎りの実験結果をご報告します。

 

<補足> かなり前の話ですが、焙煎の同業者の方が「冷凍すると取り出したときに結露するからダメだ」と言っていたので、それも今回確かめてみました。豆の袋をジップロックに入れて冷凍保存したわけですが、取り出したときにジップロックの表面にうすく水滴がつきました。これは想定内。中身のコーヒー豆はというと、目で見た限りでは水滴は確認できませんでした。手で触った感触も濡れている感じはありません。確かなことは測定器みたいなものがないと分からないのかもしれませんが、「香り」「味」という肝心の評価のところで問題ないことが分かったので結露するかしないかはこれ以上追求しないことにします。

 

冷凍庫から取り出して15分様子を見たが結露は確認できず

 

目視では結露しているかどうかはわからないのかも

 

冷凍庫も臭い移りがある。ジップロックに入れること

 

コーヒーの保存方法はどれが正解なのだ?(4)

前回まで中深煎りの「ブラジル プレミアムショコラ」の保存方法の実験を行い、このブログで報告してきたわけですが、今回はブラジルとはまったく傾向の異なる「エチオピア イルガチェフェ G1コンガ」<浅煎り>での実験結果をお伝えします。

 

スペシャルティーコーヒーの代表格と呼ばれるイルガチェフェにはさまざまな銘柄があり、それぞれの香味には大きな違いがあります。同一地域内で産出されたにもかかわらずこれほど香味に違いがあるのは珍しいかもしれません。

 

そのなかで、コンガの特徴は「スパイシー」と評される個性的な香りにあります。これが保存方法の違いによりどう変わって行くのかを見ることにします。

 

(1)豆のまま常温で保存→香り若干弱まるが、酸が穏やかになり口当たり良い<評価★★>

 

1か月以上たてば香り抜けはある程度仕方ないところです。コンガを毎回指名でお買いになるようなファンには物足りないはずですが、クセがやわらいだ分、この方が飲みやすいという人もいそうです。ちょっと微妙な評価になりました。

 

(2)粉(中挽き)にして常温で保存→アロマは皆無。酸を強く感じる<評価NG>

 

印象的で強い香りを持つコンガだけに、粉の状態で香りを確認するとコンガらしさもある程度感じられますが、抽出してみるとアロマは皆無、強めの酸だけが口に残りました。酸化による酸っぱさというやつでしょうか。NGです。

 

(3)豆のまま冷凍→命である香りが良好に保たれており長期保存の影響はほとんど感じられませんでした<評価★★★★>

 

グラインドして粉のフレーバーを確認すると、コンガらしいスパイシーな香りがしっかり残っています。蒸らし段階での粉の膨らみも良好です。

プレミアムショコラのところでも触れましたが、やはり抽出液は焙煎直後よりも濃くなったと感じました。

試飲してみるとアロマ感も十分で、長期保存の影響はほとんど感じませんでした。

 

(4)粉に挽いて冷凍→香りが弱まるというより嫌な香りに変質してしまった。<評価NG>

 

粉のフレーバーは豆まま保存したものにくらべかなり弱く感じました。蒸らしでもまったく粉は膨らみません。淹れてみると香りが弱くなったというよりも「変質」してしまった印象で、それもあまり好ましい香りではありません。また、酸味も焙煎直後よりも刺激の強い酸に感じられます。

中深煎りのプレミアムショコラでは、粉の冷凍保存でも想像以上に品質がキープされていましたが、浅煎りの場合はNGです。

 

(5)粉に挽いて冷凍+脱酸素材→意外に差がつく。浅煎りの場合は脱酸素材を入れた方が良いかも。<評価★★>

 

脱酸素材なしのものとは明らかに香りの印象が違います。変質していることはしているのですが、かすかにピーチのような香りが加わり、これはこれで好ましい印象です。ダメージが少なかったのは脱酸素材の効果、と言いきるにはサンプル数が少なすぎるわけですが、かといって一応条件を揃えて行った実験で有意の差がついたのは事実です。粉/常温保存のものも脱酸素材を入れたほうは酸が抑えられ口当たりが丸くなった印象です。

脱酸素材は1個あたり数円とそれほど高いものではないので、入れるのは「あり」と感じました。

 

脱酸素材は浅煎りでは有効かも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<まとめ>

 

中深煎りの場合も、浅煎り入りの場合も、1か月以上にわたる長期の保存で最も状態が良かったのは「豆のまま冷凍保存」でした。

これまでお客様にお伝えしてきたことが間違いでなかったことが確かめられて少しほっとしました。

そのほか、新たな発見もいくつかありました。

 

(1)中深煎りの「プレミアムショコラ」では、“粉に挽いて冷凍”もかなり良い状態を保っていました。

 中深煎り・深煎りのコーヒーは、粉に挽いても冷凍庫で保存すれば一か月以上の長期にわたり品質を保てることがわかったのは、今回の実験の収穫でした。

 

(2)浅煎りのイルガチェフェコンガの場合は、粉に挽いてしまうと、たとえ冷凍しても変質や劣化が著しく、長期保存はおすすめできないことが確かめられました。以下は単なる想像ですが、浅煎り入りの場合は、深く煎る場合にくらべて、クロロゲン酸やショ糖といった成分の多くが比較的フレッシュな状態で含まれるだけに、酸化による経時変化が激しいのかもしれません。

 

(3)それでも浅煎りのコーヒーを粉の状態で長く保存したいなら、「脱酸素材」がある程度劣化を抑えてくれるかもしれません。

香味はやはり変質しますが、嫌な感じの劣化が避けられると言ったら良いでしょうか。試す価値はあると思います。粉に挽いたらなるべく早く飲みきってしまうのが基本ですが、いつもそうできるとは限らないので、保存方法で皆さん悩むわけですから。

 

今回の実験の結果を下の表にまとめましたので、参考にしてみてください。

 

常温 冷凍
中深煎り<豆> ★★ ★★★★
中深煎り<粉> × ★★★
中深煎り<粉・脱酸素材> ★★
浅煎り<豆> ★★ ★★★★
浅煎り<粉> × ×
浅煎り<粉・脱酸素材> ★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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